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2017/09/17

【番外編】テキーラを使った洋菓子:テキーラ・マリアージュの試み

“¿Bueno?” メキシコの歴史・文化的こぼれ話

著者:松浦 芳枝 facebook
翻訳家/東京大学・慶應義塾大学スペイン語講師
メキシコ駐在や駐日メキシコ大使館勤務を経て現職。日本で初めてメキシコのAMCT認定テキーラ唎酒師としても活躍し、メキシコ文化にもっとも精通している日本人の一人。 (AMCT : Experta en Tequila certificada por AMCT)



テキーラ ケーキ

冒頭私事で恐縮だが、テキーラを始めとするアガベ文化論を研究している立場で、「日本人とテキーラ」という論文を寄稿したラテンアメリカ論文集が先月出版された。

その中で、今後の日本市場での望ましいテキーラ文化の普及にとって重要な役割を果たすものとして、デザート・菓子を中心とする「食」の分野でのテキーラの応用の可能性を示した。テキーラの間接的消費として、より広い消費者層に訴える可能性を秘めている領域の一つである。

執筆にあたって、遡ること2年ほど前だが、スペイン語での講演、論文の発表の一環として、販売を目的としたケーキを創作するに至った経緯をまとめ、分析した小論(「味覚を楽しませる美味しい三部作 — テキーラケーキ 3種類開発・販売の実験」)を見直す機会を得た。ここでは、その時の当初ぼんやりとしたアイデアが、具体的な形として購入者の味覚を楽しませてくれるケーキになるまでの経緯を、担当パティシエの感性を通じて紹介してみたい。


偶然生まれた「実験の」きっかけ


テキーラの「器用さ」を証明する方法を模索していたときに、テキーラの簡単な試飲会を兼ねた紹介のための集まりを開いた。そこで参加者の一人であり、横浜の洋菓子店にチーフパティシエとして勤務する海村賀昭(うみむらよしあき)氏がテキーラの特質に強い興味を示したことから、共通の居住地である横須賀で何か「仕掛けて」みようという流れが自然に形成された。

職業柄いろいろな洋酒を扱うこともある海村パティシエのテキーラについての知識は、恐らくは平均的日本人の知識を上回る水準ではなかったであろう。試飲をしながらこのように心地よい味と香りを予想したことは決してなかったと述べ、驚きを隠さなかったからである。そこから小研究会が発足し、筆者からは、日本語でのテキーラに関する文献(書籍及び筆者の用意した資料等)を提供して、テキーラ文化の基本を押さえてもらうことにした。サトウキビなど副原料を含まない100%アガベテキーラを使ったケーキ数種類を創作・販売するという実験がスタートした瞬間だった。

日本では、一日の主要な食事(メキシコでは昼食、日本では夕食)が食後のデザートを含む場合もあるが、午後などのお茶の時間にスイーツを取る方が一般的である。我々がターゲットにしたのはそこであり、コーヒーや紅茶、緑茶などと一緒にケーキを食べるというモジュールの中に、テキーラケーキを挿入することができるかどうかという点であった。しかも、消費者が常に新しいものを求める強い風が吹いている都心ではなく、そこからそれほど遠くないとはいえ、どちらかと言うとのんびりした地域社会においてである。実験といえば聞こえがいいが、実際は冒険というか些か向こう見ずな決定だったかもしれない。


テキーラケーキの創作、試作品作りから最終版の確定


試作品を作るにあたって、テキーラの輸入代理店から協力を得ることができた。一本は Gioventu「ジュベンテュ」の透明なブランコ(樽熟成なし、アルコール度数40% )で、もう一本は Reserva del Señor 「レセルバ デル セニョール」の輝く金色をしたレポサド(12ヶ月の樽熟成、アルコール度数40%)であった。


程なく仕上がった試作品は2点。フルーツのアナナスパッションとココナッツのムース。「ジュベンテュ」とパインとパッションフルーツでサバイオン風のムースを作り、酸味と調和させる目的でココナッツのムースと組み合わせたもの。

テキーラ ケーキ

もう一つは、「レセルバ デル セニョール」を用いて、カスタードソースであるアングレーズと合わせたムースショコラと組み合わせたもの。テキーラが良い風味付けに貢献していた。

テキーラ ケーキ

両方の試作品を筆者の家族、友人らに食してもらったところ、テキーラがケーキの材料に対して「決して出過ぎることなく」完璧に調和し、完成品に特別な趣を与えていることが確認できた。また、残念ながら、通常はテキーラの香りという、本来は非常に重要な要素があまり取り上げられることがないが、テキーラの原料のブルーアガベや樽熟成により引き出される香りが、ケーキを口にした瞬間にソフトで上品に感じられ、口当たりの柔らかさは驚くべきであった、というようなものである。

これらのコメントをフィードバックした後の会合で、パティシエからは、テキーラはケーキ作りにおいて、主要な材料の持ち味を「引き立てる」優れた補助材料であるというコメントがあった。その後は、商品としての最終版の確定に向けて、詳細を詰めて行った。横須賀で前例のないテキーラケーキの製造販売であるため、まずは期間限定として消費者の反応を見ることに決定した。2015年3月のことである。

翌4月に、協力の得られた横須賀市内のある洋菓子店で、テキーラケーキ3種類を二回に分けて製造販売することになった。まず第一弾として、二種類、テキーラのサヴァランである “サボラン(商品名Saboran)” とテキーラショコラの “テキーラス(商品名Tequilasu)” を出した。

“サボラン” は、古典的なフランス菓子サヴァランをテラコッタのカップに入れ、クレームパティシエール(カスタードクレーム)クレームシャンティー(加糖の生クリーム)の層の中に、歯ごたえと酸味のアクセントとして刻みパインを使用、サヴァラン部分については、水500ccに砂糖150gを入れて沸騰させてシロップを作り、「レセルバ デル セニョール」を加えたものにサヴァランを漬け込んで、シロップを浸み込ませておいた。ここでも一般受けを狙い、テキーラが仄かに香る程度に仕上げた。飾りとして、ミントとチョコレートで作った葉を添えた。

“テキーラス” はビスキュイジョコンド(アーモンド入りの別立て生地)を底に敷き、一層目のムースショコラにはテキーラは使わず、二層目のムースにパートボンブ(卵黄、砂糖を加熱しながら泡立てる)を、一般受けを狙いテキーラを入れ加熱。アルコール分を飛ばし香りを残して、誰でも抵抗なく受け入れやすくしたムースショコラと組み合わせた。これらのムースは単体では特別美味しいものではないが、両方を同時に口にした時の味のバランスが絶妙で、チョコレートとテキーラの相性の良さを引き立てていた。これには「ジュベンテュ」を使用。

これらの二品を出してから3週間ほどが経過して、3番目であり、三部作最後の作品をこの「実験」の締めくくりとして登場させた。五月下旬のことである。既に初夏を感じさせる陽気になっていたため、爽やかさを盛り込んだものを作成しようということになった。エジプトの神話で太陽を意味する言葉である “ラー(Ra)” という名前のパインとテキーラのケーキである。飾りのチョコレートはアガベの葉を、金色の玉はアラザンという飾りで、強く輝く太陽のイメージを其々したもの。やはり、太陽の国メキシコという非常に分かりやすい連想が功を奏したと言えよう。

“ラー” は南国系フルーツを用いて「レセルバ デル セニョール」でその旨味を引き立てるという発想であった。まずはシュトロイゼル(粉末アーモンド、バター、小麦粉)クッキーを仕込み、裏ごしをしてそぼろ状にしたものを敷き詰め焼成。この上に「ジュベンテュ」を仄かに効かせたムースココナッツを作り、パインとパッションフルーツ、「レセルバ デル セニョール」をブレンドしてムース仕立てに。3作目と言うこともあり、其々のテキーラの個性を全面に出すように仕上げた。同時に、ケーキの味の調整で、甘みと酸味のベストバランスを取ることに留意した。


多様なポテンシャルに彩られるテキーラ


テキーラ ケーキ

これらのケーキの単価は420円とし、ケーキが大人の風味とメキシコという文化を感じさせるものに仕上がったと思う。テキーラを使ったという意味で話題性もあった。驚きと躊躇の葛藤の末に、冒険心に駆られて購入していく人(主に女性)が多かったと聞いている。ここにも「女子力」の現れがあったのではないだろうか。

テキーラといえば、とかく粗暴で力や緊張、男性的な豪快さというのか、底抜けの明るさとでもいうのか、そのようなイメージが一人歩きして久しい。これらのケーキを食した感想を直接または間接的に聞いたところ、非常に上品な甘みと芳香、そして厳選した材料と一体化して生まれたビロードのような極上の滑らかさが実に印象的などの声であった。テキーラのマジックというべきか、優れた器用さが見えてくる。

この限られた実験が示したものは、テキーラは洋菓子作りの補助材料として一流であること、まだアウェイの領域であるが、今後さらなる工夫を重ねていけば、テキーラの応用としての新たな地平を切り開くことにもつながるだろう。

参考までにメキシコでの状況はといえば、全般的にはまだ限定的と言える。メキシコを訪問した日本人の間ではかなり知られている商品として、テキーラ入りのチョコレートボンボンがある。国際線・国内線ターミナルでよく見かけるが、種類は少なくなるが市中のスーパーの店頭でも売られている。

近年、ケーキなどの洋菓子として公開されているレシピは、スペイン語のサイトで徐々に増えてきているようである。その傾向は、Ana Díaz(アナ・ディアス)という料理・菓子研究家が「テキーラとデザートの美味しい関係」という言葉を使っていることにも見受けられる。応用例を挙げれば、テキーラゼリー、テキーラパウンドケーキ、テキーラチョコレートムース、テキーラクッキーなどであるが、商品としては、自家製テキーラチョコレートボンボンやクッキーなどとまだ少ないようである。

テキーラクッキーのとある公開レシピの箇所で、テキーラを加えて食べてもらう人を「驚かせて」みるのも一興だとする記載があった。それはメキシコでも、今回の試みのような「本格的な」洋菓子の材料として、テキーラがまだ十分に認知されるに至っていないことを示していると思う。洋菓子作りで不動に地位を築いているラムを目標にして、テキーラの持つ多様なポテンシャルを目覚まさせる時期が来ているのではないか。これまで発信することの少ない日本から新たな挑戦の始まりを告げることも意義があるだろう。

海村パティシエはこのように締めくくった。これまでテキーラが洋菓子作りに取り入れられていないことが不思議であり、「テキーラはパティシエにとってなんと心強い盟友なのか!」という言葉の中に、限りない可能性を見出しているのだ。

著:松浦 芳枝



テキーラケーキ3種類レシピ(海村賀昭 氏作成)


  • 分量は4〜5人前。
  • 使用するテキーラは、テキーラの持つ本来の味と香りの複雑系をより堪能できるので、銘柄に拘らず、100%アガベタイプを推奨。またテキーラの分量は好みで増減すると良いだろう。
  • テキーラとパインのケーキの当初のレシピは40〜50人前を想定していたので、下記の数値はその1割に調整してある。


1) テキーラのサヴァラン (商品名:Saboran) 


強力粉 250g
ドライイースト 10g
牛乳 50cc
4個
ひと摘み
バター 190g
砂糖 13g
テキーラ(Reserva del Señor) 50cc


2) テキーラショコラ (商品名:Tequilasu)


ムーステキーラ(1)

卵黄 4個
グラニュー糖 40g
スィートチョコレート 200g
35%生クリーム 630g

ムーステキーラ(2)

卵黄 6個
グラニュー糖 60g
牛乳 60g
ゼラチン 12g
テキーラ(Gioventu) 80cc
35%生クリーム 720g

ジョコンド 8取り 2枚分

アーモンドプードル 180g
全卵 5個
薄力粉 90g
卵白 200g
グラニュー糖 100g
バター 35g


3) パインとテキーラのケーキ (商品名:Ra )


ムースココナッツ

ココナッツピューレ 95g
グラニュー糖 17g
ゼラチン 6.4g
38%生クリーム 184g
テキーラ(Reserva del Señor) 12cc

パインムース

テキーラ(Gioventu) 25cc
パッションピューレ 25g
パインピューレ 100g
グラニュー糖 50g
ゼラチン 7.5g
38%生クリーム 250g
卵黄 2.5個

シュトロイゼル

アーモンドプードル 30g
上白糖 30g
薄力粉 30g
バター 30g



ー パティシエ プロフィール ー

海村 賀昭(うみむらよしあき)
1964年東京都中野区生まれ、横須賀育ち。
1982年位から洋菓子作りの世界に入る。横須賀(花らんぷ)から都内を巡り、1987年フランスのアルザス地方に3ヶ月位の研修滞在を経て、現在は横浜市内の洋菓子店に勤務。またパティシエとして経験を生かして、講習会を開き、一般の家庭でケーキ(お菓子)を作るときのコツを伝授する活動を展開中。






著者:松浦 芳枝 facebook

翻訳家/東京大学・慶應義塾大学スペイン語講師
メキシコ駐在や駐日メキシコ大使館勤務を経て現職。日本で初めてメキシコのAMCT認定テキーラ唎酒師としても活躍し、メキシコ文化にもっとも精通している日本人の一人。 (AMCT : Experta en Tequila certificada por AMCT)

2017/06/19

語源から知るメキシコの産物 (I) - スペイン語に与えた影響

“¿Bueno?” メキシコの歴史・文化的こぼれ話

著者:松浦 芳枝 facebook
翻訳家/東京大学・慶應義塾大学スペイン語講師
メキシコ駐在や駐日メキシコ大使館勤務を経て現職。日本で初めてメキシコのAMCT認定テキーラ唎酒師としても活躍し、メキシコ文化にもっとも精通している日本人の一人。 (AMCT : Experta en Tequila certificada por AMCT)




5年ほど前のことだが、都内で「知っているメキシコ、知らないメキシコ」というタイトルで講演を行った。世界にはたくさんの国があるが、私たち日本人にとって、メキシコは「それなりに知られている国の一つであるという認識がある一方で、実態はそういう見かけとは異なるのではないかという前提で話をした。そして意外だった、予想外であったという声が上がったのを記憶している。その後、テキーラの公式セミナーへの関与などで、「知らないメキシコ」の部分をどのように「知っている」側に移していくことができるかを課題にして取り組みを行って来た。

メキシコのことを知るにはメキシコに尋ねるに限る」ので、言語の壁によって、多くの興味深いながらも、僅かまたはほとんど紹介されていない文化的事項について、文献を収集しながら自分なりに消化して、テーマ別に整理をしてみようという気持ちになっていた。メキシコに9年住み、帰国後50回ほどメキシコを訪れているが、時の経過に伴い、新規開発による街の外観の大幅な変化をその都度感じる反面、在住時とほとんど変わらない移動市の様子や、特にメキシコ市中心部の喧騒などは、数十年経った今日でも、「戻ってきた」とい気持ちにさせてくれる暖かさを感じ、心に染み入ることが多々ある。

五月の中旬に横浜市で開催された “Mexican Port Market” というメキシコ文化の様々な文化面を扱ったイベントのトークショーの一つに出演して話をさせて頂く機会を得た。そこで、先住民アステカ族の言葉であるナワトル語に起源を持つメキシコ的なもの、とりわけ昨今の日常生活の中にかなり自然に取り込まれている産品を取り上げて、昔と今を繋ぐ身近ながらも重要な担い手として、古くからの伝統を今の中に伝える様子について述べた。カタカナ表記の下に隠された、先住民の言葉に起源を持つ興味深い事例を幾つか提示した。「知っている」側の項目が僅かとはいえ増えたと感じ、こういう作業を根気よく継続していくことの重要さを再確認した次第である。この小稿は、上述のトークを加筆修正して、文体を調整したものである。


メキシコは太陽の国それとも月の国?



まず「メキシコ」である。正式にはメキシコ合衆国(通常はメヒコと簡略化されることが多い)という名称であり、スペイン語ではMéxico(メヒコ)と発音します。スペイン語圏全体で4億数千万人の総人口の中で最大の人口の国はメキシコ(1億2000万人ほど)である。スペイン及びアメリカ大陸にあるスペイン語圏では、各々のスペイン語はそれなりに個性的であり、それ自体が一つの重要な研究テーマになるほどの重要性があるという意味に於いて、メキシコの場合はアステカ、マヤなどの先住民言語文化が強く反映してできたメキシコ・スペイン語であり、最もオリジナル(独自性のある)スペイン語と称されている。本稿では、最大の先住民言語であるナワトル語に起源を持ち、今日のスペイン語に取り込まれている比較的身近なケースを取り上げる。複数の解釈が成り立つ場合もあるが、原則的に代表的なものを一つ選ぶことにする。

まずは国名「メキシコ」から見てみよう。メキシコは燦々と輝く太陽の国、陽気な国民というイメージをもたれることが少なくないだろう。確かに、よく言われる国民性としての明るさ、陽気さ、楽観的人生観、明日があるさ、というようなキーワードがカラッとした気候と太陽の強い日差しの風景と重なることが少なくないだろう。確かに、先住民アステカ族の時代に太陽神への畏敬があり、太陽が、光の根源として社会を決定づけるほどの拠り所であったことは重要視する必要があるのは当然である。ナワトル語では、México(メヒコ) ←meztli(メストリ、意味月)+ xitle(シトル、意味中心)+co(場所)月の中心の場所を意味しています。メヒコという単語は、月の中心(天体の月またはアステカ帝国の月という名前の湖)の場所ということになる。太陽の強烈さ、華やかさと対照的な月の優しさ、しっとり感のようなものが背景にあることは興味深いと言えよう。


茶色い嗜好品 ー カカオ



次は、チョコレートや飲みものとしても、今日の日本では季節を問わずに様々な世代に人気のある食材であるカカオ。スペイン語の発音はcacaoであり、ナワトル語のcacahuatl(カカウアトル)から来ていて、カカオそのものを指す言葉である。

三番目は、カカオの代表的な使用例であるチョコレート。これは、ショコク(苦い)アトル(水)という部分からなる xocolatl(ショコラトル)という言葉が起源であり、そこからスペイン語のchocolate(チョコラテ), 英語のchocolate(チョコレート), フランス語のchocolat(ショコラ)、イタリア語のcioccolato(チョコラト)などのような言葉が派生していった訳である。


色鮮やかな畑から ー アボカド、唐辛子、トマト



次に作物を取り上げてみよう。最近はレシピのかなりの充実のおかげで、日々の食事の中へ自然に取り込まれて、他の材料と不思議に馴染む食材でファンも多く、森のバターなどと呼ばれることがある栄養豊かなアボカドである。この果物はスペイン語ではAguacate(アグアカテ)と言い、語源はahuacatl (アウアカトル)で、その語の意味するところは男性の生殖器(睾丸)なのである。この命名に、アステカの人々のおおらかさが見て取れ、見たものをそのままストレートに表現するところに優れたユーモアのセンスも見受けられ、微笑ましいとすら感じる。

そしてアボカドからその料理例として、今日の日本でもよく知られるようになったワカモレがある。アボカドに玉ねぎ、トマト、唐辛子、好みでシラントロ(パクチー)などをいれて作るディップで、メキシコ料理店やテックスメックス料理店では必ずあるメニューであり、材料を揃えるのに苦労がないため、自分で作って食する人もかなり増えているようだ。これはスペイン語ではguacamole(グアカモレ)と言い、ahuacatl(アボカド)とmulli(発音はムリ、ソースの意味)から成るahuacamulli 文字通り、アボカドソースを意味するのだ。事実、日本ではワカモレという言い方がもう定着していて、言葉が短く発音でも表記でも容易である点では機能的であり、確かに一理はあろう。しかし、カタカタ名に埋没する「何か」があり、本来のアボカドソースという意味のナワトル語の「メッセージ」が伝わりにくい。ワカモレという名前で愛されている事実を踏まえるも、隠れたところにその起源があることを押さえるのは意義があるだろう。

そして、guacamoleや様々なサルサやメキシコ料理には欠かせない唐辛子、スペイン語ではchile(チレ)といいます。南米ではajíという言い方もあるがメキシコではchileが標準である。これは文字通り唐辛子を意味するchilliという言葉に由来する。そして、トマトであるが、日本でもいろいろな種類のトマトが食卓を飾ることが多いが、メキシコではやはりサルサや煮込み料理などには不可欠な食材である。メキシコの多くの地域ではトマトを表す言葉は二つある。一つはjitomate(ヒトマテ)、これはxictomatl(シクトマトル)シクまたはシクトリ(お臍)とtomatl (発音はトマトル、トマト)という言葉からできていて、メキシコでは赤いトマトをこのように呼んでいる。もう一つはtomate(tomatl)は小さいグリーントマト(食用ほおづき)を指していますが、tomohuac(トモウアック、意味は太った)atl(アトル、意味は水)から成っていて、瑞々しいトマトを彷彿とさせると言えよう。


これぞメキシコ料理の真髄 ー タコス



そして、メキシコ料理の代表としてのタコス、少なくとも日本ではタコスという料理名が真っ先に挙がってくるのではないだろうか。因みに一つはタコでありタコスは複数形。これは、tlaco(発音はトラコ 真ん中に)という意味で、まさに熱々のトルティージャに好みの具をいれて食するものを指すことが分かる。

そして、グアカモレやいろいろなサルサと一緒に出されるトルティージャチップがあるが。スペイン語ではtotopo(トトポ)と言い、totopochtic(トトポクティク)という「こんがりと焼いた」という意味のナワトル語から由来しています。レストランではよくナチョスという名前で呼ばれることもあり、ホームパーティなどでもよく見かける一品である。


メキシコから世界への贈り物 ー テキーラ



最後に、食材ではないが、メキシコを代表するお酒のテキーラを取り上げたい。アガベ(リュウゼツランの一種であるagave tequila Weber variedad azul 通称ブルーアガベ)で作られるメキシコの蒸留酒で、1974年以来原産地呼称で保護されている重要な品目である。テキーラを一元的に管理するテキーラ規制委員会(CRT)は、「メキシコから世界への贈り物」として紹介している。残念ながら、Tequilaという言葉を聞いただけで、非常に強いお酒であるとか、悪酔いの原因になると思い込み、驚いたり、緊張したりする人も日本ではまだ多いと言える。

テキーラという名称は、ハリスコ州にSantiado de Tequilaという名前の村があり、歴史的には昔その辺りで作られていた「テキーラ地区のメスカルワイン」の味が好評を博すようになり、テキーラの部分だけが残ったのが今の名前の直接的由来ではある。しかし、テキーラという語は、元来の意味はtéquitl(発音はテキトル、意味は農作業などの仕・作業)+tlan(発音はトラン、意味は場所)であるという説が主流であり、税を納める場所、黒曜石を切り出し加工する場所などという説もある。いずれにしても、先住民の日常生活にいかに密着した言葉に由来するかということであり、テキーラのイメージについて語るときは、是非こうした歴史文化的な側面にも留意して欲しいと思う。

普段使っている言葉で、普通に見かける食材の意外な素顔が見えてくることは興味深いと思う。同時に言語の持つ豊かさ、奥深さが過去から未来へ伝えられていくことの素晴らしさ・重要さを再確認できる。スペイン語という世界的にも重要な言語は、このような多様な文化的な豊かさに支えられて育まれてきたことを、ここ日本で第二外国語や第三外国語として気軽に学ぶ機会を持てる今日だからこそ、強調する意義があると考える。

著:松浦 芳枝

(続きは後日...)






著者:松浦 芳枝 facebook

翻訳家/東京大学・慶應義塾大学スペイン語講師
メキシコ駐在や駐日メキシコ大使館勤務を経て現職。日本で初めてメキシコのAMCT認定テキーラ唎酒師としても活躍し、メキシコ文化にもっとも精通している日本人の一人。 (AMCT : Experta en Tequila certificada por AMCT)

2017/04/18

横浜「象の鼻テラス」にてMEXICAN PORT MARKET ​(メキシカンポートマーケット)開催いたします!



2017年5月13日-14日、横浜「象の鼻テラス」にて、メキシコの海沿いの市場 “メルカド” をテーマとしたイベントを開催いたします。

テラスの中は心地よいラテンミュージックに包まれ、メキシカンフード、ドリンクを楽しみながら、カラフルな雑貨をショッピングしたり、ワークショップにも参加いただけます。目の前は横浜みなとみらいの景色が満喫できる絶好のロケーション、​隣接する港からはトラヒネラをイメージした観光ボートが出航いたします。

詳しくは MEXICAN PORT MARKET ​(メキシカンポートマーケット)公式ウェブサイトをご覧ください。


開催日:
2017年5月13日(土)11:00~20:00
2017年5月14日(日)11:00~17:00

会 場:
象の鼻テラス 横浜市中区海岸通1丁目

料 金:
入場無料 (ショッピングやワークショップなど各コンテンツ毎で料金が生じます)

共 催:
象の鼻テラスHERMANAS PROJECT

後 援:
メキシコ大使館プロメヒコメキシコ観光局

協 力:
株式会社メヒココンサルティング

連絡先:
HERMANAS PROJECT(担当 高田) 
info@frida-japan.com​
03-6869-3683(株式会社FRIDA JAPAN内)

2017/04/01

日本テキーラ協会 主催「オンライン テキーラ検定(入門講座)」が開講となりました!


この入門講座ではテキーラの生産に関する基礎知識から、テキーラの試飲を含めた実践的な楽しみ方までを日本テキーラ協会会長である 林生馬 氏が講師となり、前編・後編の全2編(各45分間)に分けてオンライン動画にて解説いたします。

日本テキーラ協会テキーラ検定の入門講座となっておりますので、次のような方が対象者になるかと思います。

・まずは基礎を学びたい。
・首都圏以外に在住で、なかなかセミナー会場に行く機会がない。
・時間に余裕がないので空き時間を利用して受講したい。
・テキーラマエストロ(日本テキーラ協会)取得コースの受講を迷っている。

ご自身での復習がてらの受講はもちろんのこと、テキーラを学びたいご友人などおられましたら、ご受講をお勧めくださいませ。

詳しくはこちらをご覧ください。


<お問い合わせは>
HEMANAS PROJECT
(エルマナスプロジェクト/担当:高田・佐原)
info@hermanas.jp
Tel 03-6869-3683
(株式会社フリーダジャパン内 営業時間 10:00 - 17:00)

2017/02/28

FOODEX2017 テキーラ・メスカル生産者来日パーティーのご案内



FOODEX2017では、メキシコよりたくさんのテキーラ・メスカル生産者が来日します。

FOODEXの会場に来場できない方々にも、新しいテキーラ・メスカルをお試しいただきたいと思い、試飲会も兼ねたアフターパーティーを開催いたします!

スペシャルゲストにCRT上海事務所代表 アルバ氏を迎え、日本テキーラ協会会長 林生馬氏とのトークイベント「トランプ政権とテキーラ」も予定しております。

アジア各国や世界のテキーラマーケットの現状、生産者とのコミュニケーションタイムを皆様方と共有したいと思いますので、奮ってのご参加お待ちしております。

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■ 日 時:2017年3月9日(木) 18:30~23:00


・トークイベント「トランプ政権とテキーラ」 20:00 ごろ開始予定

※CRT(テキーラ規制委員会)アルバ・アビレス・フェルナンデス氏と日本テキーラ協会会長の林生馬氏によるトークイベントを開催予定。

■ 会 場:唐辛子バル「チレ・デ・ルナ」

〒180-0003 東京都武蔵野市吉祥寺南町2-9-10-B1
TEL:080-6844-4584
https://www.facebook.com/chiledeluna/

■ エントランスチャージ:2,500円

・試飲無料、他はキャッシュオンとなります。
(試飲のテキーラはなくなり次第終了)
・服 装:カジュアル

主 催:日本テキーラ協会 / エルマナスプロジェクト

2017/02/07

2017年3月 「CRT テキーラ アワード(T Award)」開催のご案内

テキーラ規制委員会(CRT)主催によるセミナー「テキーラ アワード(T Award)」を下記の通り開催いたします。

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お申込みフォーム http://goo.gl/forms/ZxT0GcXmVL
締め切り日は過ぎておりますが、いくつかお問合せを受けております。
まだ残席ございますので締め切りを延長しております。
お問い合わせは info@hermanas.jp までご連絡ください。

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テキーラ規制委員会はテキーラのすべてを管理・管轄するメキシコ政府の公認機関です。テキーラ アワードはテキーラの基礎から、その定められた品質基準に至るまで、テキーラに関する正しい知識を習得することを目的としたセミナーです。

特に、飲食業に関わる従事者にとっては、本セミナーを修了することで、テキーラの正しい知識を理解し従事していると国際的に認められることから、今後の営業活動に役立てることができます。

尚、本セミナーを修了された受講者全員には修了証(ディプロマ)と個別の修了番号が付与されます。ご希望があれば、その従事者が属している組織(団体)へは認定プレート(別途費用が生じます)を制作することができます。

◆内容
1.テキーラの基礎知識
2.テキーラの歴史と神話
3.アガベの栽培と収穫
4.テキーラの製造工程
5.テキーラのテイスティング

◆日時
東京会場 2017年03月08日(水) 10:00~17:00 定員 30 名
定員になり次第締め切りとさせていただきます。

◆場所
赤坂T-FRONT ビル 3 階 会議室
〒107-0052 東京都港区赤坂1丁目3−3

◆主催
テキーラ規制委員会( CRT : Consejo Regulador del Tequila A.C.

◆後援
メキシコ大使館商務部 ProMexico

◆協力
株式会社メヒココンサルティング





Alba Xitlalic Aviles Fernandez / 講師
テキーラ規制委員会(CRT) 上海支部代表
日本をはじめ、アジア諸国にて取り扱っているすべてのテキーラを管轄。
(CRT: Consejo Regulador del Tequila A.C. )




松浦 芳枝 / 逐次通訳
翻訳家/東京大学・慶應義塾大学スペイン語講師
メキシコ駐在や駐日メキシコ大使館勤務を経て現職。日本で初めてメキシコのAMCT認定テキーラ唎酒師としても活躍し、メキシコ文化にもっとも精通している日本人の一人。
(AMCT: Experta en Tequila certificada por AMCT)




林 生馬 / CRTセミナー プロジェクトリーダー
日本テキーラ協会 会長 
訪れた蒸留所は80を数えテイスティングした銘柄は100を超える。テキーラ蒸留所のスタッフやテキーラ・アンバサダーとの親交も深い。メキシコ大使館やFOODEXをはじめ、日本全国の会場でテキーラの講習会を行い聴講者は6000名を超える。


◆お申込み
受講料 25,000円(税込)/1名 ※資料代、修了証代含
企業・団体で受講の際は認定プレートをお申込みいただけます。(別途費用 確定次第ご連絡)

参加をご希望される方は 2月27日(月)までに以下URL より必要事項をご記入の上お申し込みください。 受講料のお振り込みをもって受付完了となります。

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お申込みフォーム http://goo.gl/forms/ZxT0GcXmVL
締め切り日は過ぎておりますが、いくつかお問合せを受けております。
まだ残席ございますので締め切りを延長しております。
お問い合わせは info@hermanas.jp までご連絡ください。

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お振込先:
三菱東京UFJ 銀行 港北ニュータウン支店(店番303)
普通預金 0652239
株式会社FRIDA JAPAN カ)フリーダジャパン
※お振込み手数料はご負担願います。

◆キャンセルポリシー
・2月27日(月)までキャンセル料金は発生しません。
・2月28日(火)~ 3月6日(月)まで受講料50%のキャンセル料金が発生します。
・3月7日(火)以降 返金できません。
※キャンセル料金は、振込み手数料を差し引いた金額を銀行振込にて返金させていただきます。100%キャンセル料が発生した方は、次回 5,000 円で受講することができます。

◆認定プレート
メキシコからの送料等の都合上、5名以上のお申し込みが集まった時点でメキシコに発注となります。詳細はセミナー時にご説明いたします。

今セミナーの詳細/過去の修了者が所属されている主な組織・団体

◆セミナーのお問い合わせ
エルマナスプロジェクト / 株式会社FRIDA JAPAN 高田・佐原
Tel 03-6869-3683 / Fax 03-6701-7103 / Mail info@hermanas.jp

◆運営
CRTセミナー日本事務局
・林 生馬  (日本テキーラ協会)
・高田 一恵 (エルマナスプロジェクト / 株式会社FRIDA JAPAN)
・佐原 誠  (エルマナスプロジェクト)